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Episode 04 前田 里實 Satomi Maeda(23区阪急うめだ本店店長)

お客様には笑顔を。スタッフには仕事の楽しさを。
日本一の店舗を仕切る29歳店長

前田 里實(まえだ さとみ):阪急うめだ本店店長。2008年、阪急うめだ本店23区に新入社員として配属後、2014年に千里阪急店店長。2017年より現職。
Photo: Rakutaro / interview & text: Kana Yamamoto / edit: Yuki Ishida

 



23区の25周年をセレブレートする特別インタビューシリーズ「マイスタンダード 25th」。第4回目にお迎えするのは、数ある店舗の中で、堂々、日本一の売上を誇る、阪急うめだ本店(以下、「うめだ阪急」)の前田里實店長。弱冠29歳ながら、大阪の中心で23区ブランドをリードする彼女を支えるのは、「人とのつながり」でした。


 

売上日本一、接客時間も日本一!? 大阪流トークの磨き方

 


9年越しのお付き合いというお得意様と。「我が家は70代のおばあちゃんから私、2人の娘まで、3世代4人分をチョイスしてもらっています。前田さんがいらっしゃるところに追っかけて行くほどのファンなんです」

 

ー 活気にあふれるお店ですね。大阪ならではの接客スタイルというのはあるのですか?

うめだ阪急の特徴として、日本の北から南まで、いろんな方にいろんな所からお越しいただいています。旅行ついでに寄ってくれる方も。他店の接客をあまり知らないのですが、お客様としゃべっている時には、ボケもツッコミもあるんです。他県の方からしたら嘘みたいに思うかもしれませんが、お客様にツッコんで、お客様にツッコまれてます。お得意様になるとずっと笑っていて、なかなか帰れないという(笑)。

ー 1回あたりの接客時間が長そうですね。

ついつい話が盛り上がって、こちらも楽しくて話し込んでしまいます。気づいたら2時間くらい経つことも。1時間くらい、お話しをしながらお買い物していただいて、お見送りになっても、そこからまた10分、15分とか(笑)。たとえば、うちのスタッフに対しての「最近、女らしくなってきたね」というお客様の振りから始まって、「でも、何にもないんですよ〜」と私が割り込んでいって(笑)。そういうやりとりが永遠に続くんです。常にどこかに笑いを求めているのが、大阪ならではなのかなって。1時間あったら、洋服の話は半分弱。初めて来られた方でも30分くらいはお話しすることが多いですね。大阪の他の店舗に比べても全然長い。昔からそういうカルチャーなんです、うめだ阪急は(笑)。

ー 「トーク力」をどのように磨いているんですか?

ちょうど昨日、2年目のスタッフから相談がありました。自分が新卒で入社した時からずっと意識してるのが、お客様と商品の話をするのは、ひと笑いじゃないですけど、お客様の笑顔をいただいてからにしています。ちょっとだけ信頼が深まるというか。そのためにも、いろんなところに出向くようにしています。旅行好きなこともあって、2連休だったら1日だけでも名古屋に足を運んでみたり、ナントカ展をやっていると聞けば、朝一で観に行ってみたり。展覧会は自分の趣味というよりも、観といたらお客様との話題作りにも役立ちますよね。実際に行くことは自分の勉強にもなります。

 

当たり前じゃなかった“日本一店”の常識

 


地下鉄の駅にも直結している、阪急うめだ本店。ファッションに強いことで知られ、年齢に関係なく、ファッションの価値観や嗜好性を軸に展開されているフロア構成が人気。イベントも多く、23区ではスタイリストの髙橋リタ氏による「R」ラインのPop Up Shopを今年も開催する(2017年10月4日〜10日 ※その他のエリアでも開催あり。詳細はWebサイトにて)。

 

ー 前田さんが新卒で配属されたのが、このうめだ阪急。千里阪急店のリニューアル店長を経て、今年の4月に“ホーム”に戻ってこられて、どんなお気持ちですか?

このうめだ阪急で入社から6年間働いて、千里店に転勤する時は、みんなと離れるのが悲しかったことを覚えています。うめだ阪急は日本一、売り上げる店舗ですが、私は「日本一」しか知らなかった。外に出てみると、それが当たり前ではありませんでした。うめだ阪急では商品がなくなったから集めてほしいとお願いすると、営業さんが集めてくださる。でも、他の店舗ではそうではなかった。売れる商品はうめだ阪急に持っていかれてしまうんです(笑)。なので、半年前にここに戻ってきてからは、「この商品を他の店がどんな気持ちで出しているかわかる? だから必ず売り切るよ」とスタッフに伝えています。

 

 

ー 千里店では、リニューアルオープンを成功させるというミッションがあったそうですが、ご自身ではどのような目標を掲げられていたのですか?

当時、百貨店の同じフロアで、売上がライバルブランドに負けていたんです。「絶対に1位を取ろう」って、みんなで鼓舞しあいました。もう一つは、大阪の23区店舗の中でも順位が出るのですが、自分の中ではもっと上を目指したいという思いがあり、現在はトップ10入りすることができました。スタッフみんなで同じ目標を目指してがんばった結果です。

ー チームワークを大切にされている印象ですが、チームのモチベーションを上げるために心がけていることは?

私はあんまり店長らしくないと思います。あまり怒らないですし。何をするにも、「こういうのしようと思うんやけど、どう思う? 何したい?」と、スタッフに相談して一緒に決めています。スタッフにとって働きやすい環境じゃないと、仕事がしんどいものになってしまいます。楽しいと感じられたり、やりがいを持てたり、結果に繋がったり、というようなことがないと。私は怒られて育てられてきた世代なので(笑)、めっちゃしんどい時期もありました。まぁ、怒られたから今があるんですけど(笑)。でも時代も変わっているし、「怒る」にしても昔と一緒じゃあかんなって。メリハリはあるけど、スタッフが仲良くないといけないと思っています。

 

店長になっての新しい“やりがい”とは

 

 

ー 今年の秋のテーマは「AMBIVALENT ATTITUDE」。うめだ阪急では、どのようにお客様に提供されていますか?

カラーブロックが美しいので、マーク・ロスコの絵画のような世界観を意識して、それを分かりやすく伝えたいと思っています。新しい色の組み合わせをポイントとして、「今年はこうなんですよ」というメッセージを伝えられるようにディスプレイで提案をする。店長になってからは、接客よりもディスプレイの仕事の方が圧倒的にウェイトが大きくなりましたが、研修の際に、ビジュアルマーチャンダイジング(VMD)ディレクターの方がディスプレイの際に意識していることを教えてくださって、それがとても響いたんです。「これ、私もやってみよう!」って。

ー それは具体的にはどのようなことですか?

「お店は夢を売っている空間。お客様がカワイイとか触りたいと思えるディスプレイを心がけている」と。なるほど、もっと自由にすればいいんだなと思いました。 そういう視点で見てみると、細かい気配りが足りていなかった。今は「靴をここにかけよう」とか「バッグに小物を挿す時はこうしよう」とか、ディテールにこだわるようになりました。その研修自体も大阪から数人しか参加できないものなので、そこで得たことをちゃんとアウトプットしていかないと、という使命感もありますね。今までにないやりがいを感じています。

 

これからの23区。これからのわたし

 

 

ー もうすぐ30代を迎える前田さんの、目指す女性像とは?

流されない。自分のやり方や着こなし方など、自分をちゃんと持っている。自分らしくいたいなって思います。

ー 23区が謳っている“ジャパニーズ・ウィメンズ・スタンダード”の女性像にシンクロしていますね。

お話ししていて、自分でもびっくりしました。これバイブルに載ってるわ〜って(笑)。

ー これからの23区を作っていく世代を代表して、25周年を迎える23区への想いを教えてください。

今、アパレル業界が厳しいと言われ続ける時代で、消えていくブランドもたくさんある中、25年も続けられているのは、本当にお客様が支えてくださっているからです。感謝の気持ちでいっぱいです。そして、23区もお客様のために良いものを作りつづけているのだということが、年々、分かるようになってきました。23区の30周年とか、50周年を見たいですよね。またこの先、大阪の23区を支えていけるスタッフがここにはそろっているので、彼女らを育てていくことが私の大事な仕事だと思っています。

 

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