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Episode 13 マウロ・カンクリーニ(「カンクリーニ」マネージメントディレクター)

イタリアの高級老舗シャツ生地メーカー「カンクリーニ」と生み出す
23区の大人気定番のシャツ

(写真右手前)マウロ・カンクリーニ(Mauro Canclini):1969年生まれ。1988年、父親の経営するカンクリーニ(CANCLINI)社に入社。1997年にデザイン・生産課のマネージメントディレクターに就任し、現在に至る。
interview & text: Kana Yamamoto / edit: Yuki Ishida

 



23区の25周年をセレブレートする特別インタビューシリーズ「マイスタンダード 25th」。第13回目にお迎えするのは、エルメス、ルイ・ヴィトン、グッチ、ディオールといったトップメゾンにも愛される名門シャツ生地メーカー「カンクリーニ」のマネージメントディレクター、マウロ・カンクリーニ氏。23区の超定番アイテムといえばシャツ。その中でも、カンクリーニのシャツは23区スタッフにもファンが多いことでも有名です。満を持して登場する、イタリアの伊達男に話をうかがいました。


 

コモ湖畔に位置する美しいシルクの街から世界へ

 

 

ー 日本をはじめ、世界的に圧倒的な人気を誇る「カンクリーニ」。1925年に創業され、その後、名門シャツ生地メーカーとしてその名を馳せるようになるまでの経緯を教えてください。

カンクリーニ社は創業時も現在も、イタリアのコモ地方にあります。1925年に、私の祖父であるジュゼッペ・カンクリーニがテキスタイル製造メーカーとして創業しました。ジュゼッペは幼少のころより独創的で、創意工夫に富んだ子どもでした。そのため、織機にも明るく、25歳の時にカンクリーニを立ち上げ、シルクの肌着生地を製造していました。戦時中には、会社生存のためにシルクのパラシュート生地の製造も行ったそうです。
1960年になると、次の世代のヴィットリオとジャンカルロがカンクリーニ社に加わり、シルクスカーフやシルクローブ(礼服、法衣)などの商品を開発。世界にその名が広く知られるように。現在のクライアントは100カ国にも及び、海外へ輸出する製品が、売上の4分の3を占めています。

 

 

ー コモ地方は、湖畔の美しい街並みが魅力のひとつですが、シルクの産地としても有名ですね。

ええ。コモ地方はシルクの国内生産量の95%を担っており、長い歴史があります。1400年、ルドヴィーコ・スフォルツァ君主が、コモ湖の近くに蚕のエサである桑を植栽するように命じたことに端を発します。
そして、19世紀後半に、重要な変化が起こります。織機が機械化され、1869年には、シルクの生産者を育てる専門学校が設立されたのです。第二次世界大戦の終わり、イタリアのテキスタイル工業は不利な状況下に置かれたにもかかわらず、コモは先進国をもしのぐ復興を遂げ、国民性や地域性までもが称賛されました。1972年には、生産量で中国をしのぎ、クオリティで日本を超えるシルクの産地であり産業集積地となったのです。

ー 今はシルクだけでなく、さまざまな生地を取り扱うメーカーへと発展されました。

シルク生地の製造から、綿生地製造へ移行していったところ、アルプス、ドイツ、フランスへの輸出拡大につながっていきました。
現社長のシモーネと私がカンクリーニ社に加わったのが1980年の終わりです。積極的に新たな市場を開拓し、生産量を格段に引き上げ、存在感を増していきました。その努力が実り、顧客との信頼と信用を築き、極上のシャツのテキスタイルメーカーとして現在では広く認識されていきます。

 

 

カンクリーニの生地が愛される理由

 

ー 生地の品質は言うに及ばずですが、バリエーションも豊富で、ファッション感度の高い人たちにも支持されているのが特徴的ですね。

イタリアテキスタイル工業が成功を収めた要因は、生産技術の工夫、革新性、創造性、ファッションを1つにまとめた手腕にあります。イタリアの主な産業に繊維産業やテキスタイル工業があるのですが、コモ地方の他にミラノ北部、イタリア北部、ビエラ地方、ベルガモ地方もそれらが盛んな地域です。
カンクリーニは、製造と表現の観点から、高品質な原材料の買い付けにこだわっています。そして技術革新のために、売上高の5分の1をR&D(研究開発)に投資しつづけています。
また、フェアトレード精神に則った仕入れにも力を入れています。こうした選択が未来のパートナーと信頼を築き、新たなお客様との出会いをもたらしてくれるのです。我が社にとって、とても意味のあることだと考えています。

 

 

ー カンクリーニのタグライン“Creating together side by side”に込められたメッセージを教えてください。

文字通り、“ともに作りあげる”という意味です。カンクリーニは、生地作りにおいては、お客様の求めるゴールに向けて密にコミュニケーションを取りながら、またパートナーシップを大切にする会社です。この企業スピリッツが、ヴィトンやエルメスなどの世界的メゾンにカンクリーニが築いてきたシャツ生地作りにおける知見とクリエイティビティを提供し、それらの積み重ねからカンクリーニのオリジナリティが生まれてきた。製品とお客様へのサービスに対する創造性や熱意は、一朝一夕では表現できるものではありません。

 

23区と生み出す愛される定番シャツ

 

ー 23区とは、エクスクルーシブのダブルネーム素材の開発をされています。

トレンドは変化しても、エクスクルーシブな素材は不変であると常に感じています。上質なシャツ素材を探されていた23区と我が社との協働が始まったのが2009年。2社のコラボレーションは満足のゆくものであり、生産者と生地素材メーカーを示す、「23区+カンクリーニ」のダブルネームが誕生しました。そのシャツが23区を代表する定番となり、こうしてカンクリーニを大きく取り上げていただけてとても嬉しいです。社内でもみな、モチベーションが上がっています。このパートナーシップが未来に向けて長く続き、お互いのブランドの、より大きな発展を期待しています。

ー レディースの服に採用されることは、珍しいのではないでしょうか?

毎シーズン、トレンドに合わせたデザインが素材とマッチしており、とても楽しみにしています。23区は洗練された物づくりとコンセプトがあり、芯のあるブランドだと思います。

ー 日本についてはどのような印象をお持ちですか?

ファッションの絶え間ない刷新、そして、日本人の持つ品位、優雅さに魅了されます。カンクリーニにとって、お手本であり、感動の源泉です。カンクリーニの心構えも、日本文化における姿勢、すなわち研究、工夫、革新などに多いに共感を覚えるのです。

 

 

ー 23区の25周年に向けてメッセージをいただけますか?

25周年、心よりお祝い申し上げます、そしてさらなるご成功を期待いたします。いつの時代も、シーズンも、変わらず洗練された23区でいてください。これからも変わらず23区の顔になれるよう、良い素材を提供し、パートナーとして物づくりに携われることを楽しみにしております。

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