ただ見た目に美しいだけではない、細部にまで並々ならぬこだわりを持って作られたものには、誰かに話したくなる「STORY」がある。#03では、“踊れるデニム”として人気のあるBallet Denim(バレエデニム)をクローズアップ。動きやすくストレッチの効いた快適なデニムはどのようにして生まれたのか。誕生の背景から商品の魅力、そして今後の展望まで、デザイナーの吉田玉美さんにお話を伺った。
「きっかけは、縦横斜めに伸びてしっかり戻る
ストレッチ性の高いデニム生地でした」
− Ballet Denimはいつ誕生したのですか?
2020年10月に、チャコット初のデニムアイテムとして「Ballet Skinny(バレエスキニー)」が登場しました。「バレリーナのような美しい姿勢をより多くの女性に」をテーマに、姿勢を美しく見せる設計で、踊れるほど動きやすい高機能ストレッチデニムを使用しています。
− なぜ、チャコットがデニムを作ることになったのでしょうか?
きっかけは、縦横斜めに伸びてしっかり戻るこのデニム生地との出会いからでした。このすばらしいストレッチ素材を使って、クラシックバレエやダンスなど、身体を動かす方に着ていただけるようなデニムを作りたいと考えたのが始まりです。
− 素材の魅力ありきで、ものづくりがスタートしたのですね。開発はどのように行われましたか?
市場をリサーチしつつ、チャコットのオリジナル性を出すにはどこにフォーカスすれば良いか、試作を繰り返しました。
まずはガードルを入れ込み、ヒップアップするデニムを考えましたが、社内のリアクションはイマイチで……。腰周りをすっと誰かに押されているような感じで背筋を伸ばせるよう、仙骨部分にポケットを付けて何かを入れることも考えました。
それから、腰周りをグッと締め上げ、自然と骨盤へ意識を向かわせるデニムはどうかと思い、チャコットのボトムで多用しているパワーネットを付けた試作が生まれ、最終的には幅広の共(とも)生地を使用することで完成しました。
まずはガードルを入れ込み、ヒップアップするデニムを考えましたが、社内のリアクションはイマイチで……。腰周りをすっと誰かに押されているような感じで背筋を伸ばせるよう、仙骨部分にポケットを付けて何かを入れることも考えました。
それから、腰周りをグッと締め上げ、自然と骨盤へ意識を向かわせるデニムはどうかと思い、チャコットのボトムで多用しているパワーネットを付けた試作が生まれ、最終的には幅広の共(とも)生地を使用することで完成しました。
− パワーネットではなく、なぜ共(とも)生地にしたのですか?
このデニム生地はストレッチがとても効いていて、キックバックも良いので、力具合としてはパワーネットに遜色ないと感じました。共(とも)生地の方が商品としての完成度が上がりますし、さらにプリントを入れることもできるので、そこで、この特徴的なパーツには、グラフィックデザイナーの伊藤心さんに描いていただいたイラストをあしらうことにしました。
− 現在Ballet Denim には3つのラインナップがありますが、それぞれのデニムが生まれた経緯や特徴について教えてください。
Ballet Denimのはじめてのプロダクトが、「Ballet Skinny Regular Fit(バレエスキニー レギュラーフィット)」です。脚のラインにフィットするタイトなシルエットながら、ひざから下は少しゆとりを持たせたスリムなラインになっています。というのも、バレエダンサーはふくらはぎにしっかりと筋肉がついている方が多いので、ぴったりし過ぎず、ふくらはぎのラインを拾わない設計にしました。
一方で、「もっとぴったりしたもので、脚を細く見せたい」というお客さまの声も多かったので、レギュラーフィットのひざから下をワンサイズダウンさせた「Ballet Skinny More Fit(バレエスキニー モアフィット)」が翌年の2021年10月に登場しました。
そして2023年1月には、「スキニーデニムをあまりはかない方にも、チャコットのデニムをはいて欲しい」という思いから、フレアラインとセンタープレスで、スラックスのようにはける「Ballet Denim Smart Flare(バレエデニム スマートフレア)」を発売しました。
一方で、「もっとぴったりしたもので、脚を細く見せたい」というお客さまの声も多かったので、レギュラーフィットのひざから下をワンサイズダウンさせた「Ballet Skinny More Fit(バレエスキニー モアフィット)」が翌年の2021年10月に登場しました。
そして2023年1月には、「スキニーデニムをあまりはかない方にも、チャコットのデニムをはいて欲しい」という思いから、フレアラインとセンタープレスで、スラックスのようにはける「Ballet Denim Smart Flare(バレエデニム スマートフレア)」を発売しました。
「ウエストをしっかり包み込みながらも、
窮屈さを感じさせないはき心地が魅力」
− 二重になったウエスト周り以外にも、パターン設計でこだわっているポイントはありますか?
ポケットの袋布にストレッチ素材を使用することで、ぐるりと一周力がかかるように設計しています。幅広の生地でウエストをしっかり包み込みながらも、適度なサポート力で窮屈さを感じさせないはき心地が最大の魅力です。
Ballet Skinnyに関しては、デニムの要素を残しながらも、ひざ下部分は少しゆとりをもたせたパターンで仕上げています。
Ballet Skinnyに関しては、デニムの要素を残しながらも、ひざ下部分は少しゆとりをもたせたパターンで仕上げています。
− お客さまからの要望で、改良した箇所はありますか?
Ballet Skinny More Fitを発売するタイミングで、ファスナーの寸法を長くしてよりはきやすく、ヒールをはいた時にも美しく見えるように股下を少しだけ長くしました。また、バレエダンサーは身体のラインを出したい方も多いので、よりタイトに着ていただけるように00(SS)サイズを追加しました。
− ディテールにはどのようなこだわりを詰め込んでいますか?
チャコットのお客さまには、かわいくてロマンティックなものが好きな方が多いので、手に取った時に、心ときめくポイントを加えることを心がけています。そのひとつのアイディアとして生まれたのが、ヒップポケットに取り付けられている「フラッシャー」です。チャコットのアイデンティティーを感じさせるものは何かを考え、トゥシューズのソールの型をくり抜いたあとに出る廃材を利用し、チュールやリボンを組み合わせました。
現在のフラッシャーは2代目なのですが、初代のフラッシャーに使われていた廃材パーツのシルエットをバックポケットに配し、ポケットの入り口を補強するステッチもピンク色の糸を使用しています。
現在のフラッシャーは2代目なのですが、初代のフラッシャーに使われていた廃材パーツのシルエットをバックポケットに配し、ポケットの入り口を補強するステッチもピンク色の糸を使用しています。
− カラー展開も、他にはないニュアンスのあるピンクが揃っていますよね。
ピンクはチャコットのイメージカラーですし、チャコットのお客さまにとってはなじみの深い色でもあります。シーズンのテーマカラーに合わせたピンクをグラデーションで数色展開することで、普段のコーディネートに取り入れやすく、自社の製品とも合わせやすいと思います。
「Ballet Denimを入り口にチャコットを知ってもらえるよう、価値あるアイテムを作りたい」
− 開発していくなかで、もっとも苦労した点を教えてください。
デニムを作るということに関しては知識がゼロでしたので、日々勉強と実践を繰り返ししながらものづくりをしなければなりません。より多くの女性を美しく見せるデニムはどのようなものなのか、それはどこにポイントがあるのかを探すことに、多くの時間を要しました。
− 他社にはない、最大のこだわりはなんですか?
「踊れるほどストレッチが効いた快適なデニム」というところです。それでいて、ブルーとインディゴブルーは、デニム本来の色落ち感なども楽しめるので、普段からデニムブランドを愛用する方にも満足いただけると自負しています。
− 最後に、今後の展望について教えてください。
ストレッチの効いた生地の特性を活かして、いろいろなアイテムにチャレンジしたいです。今はチャコットをすでに知っている方がBallet Denimを買ってくださっているのですが、今後はBallet Denimを入り口にチャコットを知ってもらえるよう、価値あるアイテムを作りたいと思っています。
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